2026年1月17日土曜日

カメックスのデザインが変わった話

『緑』で初めて選んだ相棒はゼニガメ、最終進化系カメックスにも愛着がわく
満を持して登場した『青』版のカメックスのイラストのなんとカッコいいことか!
「とりかえっこプリーズキャンペーン」のポケモンカードもカメックスを選んだ

 

ところでカメックスの30年ほど前と現在の姿に、違いがあることはご存知だろうか。

『ポケットモンスター 赤・緑・青』をリメイクした『ファイアレッド・リーフグリーン』(以下FRLG)で描き直された公式イラストで、「背中の大砲のフタ」部分の甲羅の形状の断面がからに変わった。

個人的にこの変更されたパーツを「キャノンカバー」と呼称している。

私はこの変更が気に食わなかったので長年元のデザイン、特に『青』のパッケージに描かれたカメックス(以下前者)に合わせてイラストを描いてきた(左)。
しかし、ある日を境に、ふと思い立って右図のように描き直した。


どのような心境の変化で変更後のデザイン(以下後者)を受け入れたか文章に残しておく。


『青』パッケージのカメックスが至高なのに


自分にとってカメックスといったら「ゲームフリークの杉森 建氏が描いた『青』のパッケージ」なのである。しかし世の中のカメックスの多くは異なる姿で描かれていた。

左の玩具の写真は『ポケットモンスター公式ファンブック('97)』より

実際には、かなり初期から「本編ゲーム」「TVアニメや玩具」でデザインが異なっており、手や足のツメの数はさておき、キャノンカバーの形状は明確に前者後者で異なっていた。

本編ゲームシリーズのカメックスだけが前者を貫いていたが、『FRLG』のタイミングで杉森氏によって新たに描きおこされた公式イラストで後者に合わせたデザインになった。画像右のサントラCDブックレットの表紙に掲載されている、後ろ姿で振り返るイラストだ。

さらに正確に言えば 『FRLG』のゲーム内グラフィックのドット絵はキャノンカバーがまだ前者の形状で、ドット絵も後者に変更されたのは『DP』のカメックスからだ。
完全に前者のカメックスは消えた…。

絵描く時にいつも参考にしていたあの『青』のカメックスの絵は間違いだったんですか……?


キャノンカバーの形状

カメックスをカメックスたらしめる特徴は背中に大砲がついている、まるでデストロンの機械合成怪人のような生物らしからぬメカニカルな機構だ。

「TVアニメ」や『ポケモンスタジアム』ではキャノンカバーが開閉するギミックも描写され、生き物でありながらクールな変形メカのような魅力を持ち合わせている。形状はともかくガシャンと大砲を出すモーションは好き。


キャノンカバーの形状が後者へ変更された最初の理由として、初期のバンダイのガチャポンフィギュア(1996前半発売)から既に後者のデザインになっており、フィギュアの金型の都合や商品の強度の問題で、やむを得ず簡略化されたと推測している。

TVアニメでも同じく作画コストの問題で"キャラクターデザイン"に後者を採用したのはないだろうか。甲羅とキャノンカバーの隙間や大砲の根本まで「手描きで立体的に全コマ描かなければならない」と言われたら作業が大変になるのが想像できる。

今ならそのように理解できる。

しかし当時は本編ゲームの公式イラストこそがオリジナルで、アニメや派生作品の簡略化されたデザインは一段低い"カッコ悪い"ものとして見ていた。『FRLG』以後の公式イラストが後者となったことは"原案サイドが折れた"ように私の目には映り、大変ショックをうけた。

公式イラストで比べると前者( は甲羅がフタのように開閉し大砲が収納される様子が想像しやすかったが、後者 新公式イラストはキャノンカバーが甲羅に癒着されて開閉不可なパーツに見える…などと慣れ親しんだ姿の変更にぶつくさ文句を言い続けてきたのである。


ツメの数もわりと違うよね

そんなの気にしない? 絵を描くポケモンファンは気にするんだ。

実際、公式イラストのカメックスの脚のツメの解釈は難しかった。現在のゲームグラフィックのように360度様々な角度から眺められる3DCGならよく観察できるが、初代では一方向だけの解像度の低いドット絵と公式イラストだけが一次資料だった。

石原:元々ドット絵とイラストだったキャラクターを、バンダイでガシャポンで売り出すときに立体化しなくてはいけなかったんです。そのときに杉森君は山のようにポケモンの後ろ姿を描かされたんですね。 
杉森:今まで気分で描いていたポケモンの背中のトゲの本数まで決めなくてはいけないんですから。

/絶対ゲームボーイ読本 ポケモンの生みの親座談会(1998)

以前の記事でも引用した、このインタビューで触れられている"バンダイでカシャポン"に合致する商品では前から見てツメ3本なので、デザインを総括する杉森氏本人はそのように描いて提出したのだろうと推測される。TOMYのモンコレやプラモデルなどもツメ前3本だ。

ゲームの新作、『金銀』のポケモン図鑑には足跡の形状も掲載されており、前方にツメ3本、踵側に1本が本編ゲームを作る原案サイドの示す正解だ。

しかし「TVアニメ」は、ツメ前2本、踵1本となっており、放送以後のカメックスは長年こちらが勢力をのばしていく。


アニメの作画向けキャラデザではこの図のように公式イラストの見た目からツメ計3本(前2後1)であると誤解したまま制作が進んだのではないだろうか。

『ポケモンスタジアム2』より

アニメの影響力は大きいのか、Nintendo 64向け3Dモデルでも足のツメ前2だ。
ポケモンカードの開発でも有名なクリーチャーズという会社が一貫してポケモンの3Dモデル制作を担当し続けており、このツメ前2本カメックスが引き継がれていくことになる。

『コロシアム』『バトレボ』『3DS 全国図鑑Pro』いずれもツメ前2本の3Dモデル

振り返ればファンにとって「どの会社が主体で、どこの設定に合わせるべきなのか曖昧」な時期がしばらく続いていた。

やっぱゲームフリークがオリジナルなんじゃん

ツメの数の統一のターニングポイントは完全新作『X・Y』(2013)で初めて本編ゲームのグラフィックが3DCGに完全移行したタイミングだ。

ゲームに登場する3Dモデルは、クリーチャーズが制作してきた派生作品向けのモデルが引き継がれているようだが、一部ゲームフリークのデザインが尊重され、モデルが本編向けに変更されている。ツメ前3本のカメックスの復権である。以後アニメでもこちらに準拠されていく。

「モンコレ」 1997年(ツメ前3)、2011年(前2)、2023年(前3)
「モンコレ」は長寿シリーズなのでデザイン監修の方針の変化が、アニメや3D化、『XY』発売を区切りに、ツメの数として現れている。
しかし高額商品となると顧客視点でただごとではない。

『XY』発売以後モデルチェンジしたバンダイの可動フィギュア

D-Arts カメックス(2013)
足のツメが前2本になっている上に口内にキバもない造形。キャノンカバーはもちろん後者
当時買ったけど…コレジャナイ感が大きかった。

S.H.Figuarts カメックス -Arts Remix-(2019)
D-Artsからツメ前3
にデザインが修正された商品。「造形を新設定に合わせたカメックスが登場。」とあるが、自分にとって「元々、本編ゲームの足ツメ前3本、牙アリが本当のカメックスなのに」という歯痒さのある説明だ。なんとなく買わなかった。


『赤・緑』直後の公式イラストと『青』のパッケージ

とはいえ、杉森氏が描いたカメックスでさえ、最初期のイラストと青のパッケージで手のツメの数が異なるのだ。ツメや指の数に関してはピジョンやバリヤードなど多くのポケモンで細かな変更があるためカメックス固有の問題とは思っていない。

指の数が気になる方は以下の記事が詳しいので是非目を通して頂きたい。
4本指ポケモンの修正/カクタスごう
鳥ポケモンの足の指の数/カクタスごう

いずれにしろ私にとっては「キャノンカバー」のデザイン変更が最も重要なファクターだ。大砲こそがカメックスのデザインの要である。メガカメックスの巨大な大砲のキャノンカバーが後者のデザインを前提とした姿だったのは追い打ちだった。

多くのカメックスファンにとっても『XY』は、ツメの数が「直った」ことよりも「ハイドロポンプが大砲から出なくなってしまった」表現低下の方が強く印象に残っているのではないだろうか。


今のカメックスもいいかもしれん

結局なぜ後者のキャノンカバーの形状を受け入れたか。
それは『スカーレット・バイオレット(以下SV)』のカメックスがカッコよかったから。

キャノンカバーの開閉に効果音も付いて、かっこいい!

ハイドロポンプが二門砲から放たれる!

イカした遊泳専用モーションがある!

ゲームの作り手が、ちゃんとカメックスのこと大事にしているというのが伝わってきた。もちろんカメックスだけではなく、多くのおなじみのポケモンたちに個別の調整が加えられ豊かな表現を得ていたと感じる。(バクフーンの炎とか)

『XY』以後長年、デザインと無関係に汎用の攻撃エフェクトでハイドロポンプが放たれるため、単なる飾りに成り下がっていた2つの大砲が、『SV』でちゃんと機能するように輝きを取り戻した。

『ポケモンスタジアム2』の151種ならまだしも、『XY』当時700種を超えるポケモンの表現を等しく管理するのは大変で、全種撫でられる「ポケパルレ」実装も相当な労力だったはずだ。『SV』まできてようやくおなじみのポケモンの表現にもさらに手を加える余力が捻出できるようになったのではないだろうか。開発側だって、できるものなら本当はこう表現したかったが様々な折り合いや断腸の想いを紡いできたに違いない。


リザードンばかり出番が多かったり、メガシンカが2つあったり、キョダイマックスが先行で与えられたり、そういった格差に関する自分が抱いた細かな不満も水に流して良いのではないか。カメックスがゲームの中でちゃんとかっこいいなら全然許せる。そういう心境の変化に気づいた。

今までの「カメックスの扱いに関する細かな不信感」が積もり重なり、それが無かった時代の前者のキャノンカバーのデザインに固執していたのかもしれない。自分の中でそれを払拭する魅力が最新作のカメックスにあった。

ツメの数の件を見る限り、原案サイドのデザインの一貫性はある程度しっかりしていて、早い時期に切り替えたキャノンカバーの形状についても、納得の上でアニメや他作品とのすり合わせが行われたのだろう。

自分も折り合いをつけるか…そう思い立って過去に描いたイラストのキャノンカバーを修正した。メガカメックスと並べるならこちらの方が自然な形状。

カメックスのたかさ1.6mは、メガカメックスになっても維持されるため、同じ直立姿勢で頭頂までの身長を測ると解釈して間違いはないだろう。
ただし、普段は前傾姿勢になっているので頭の位置は1.6mより低く見えるかもしれない。


さいごに

ちなみに人生初の相棒であったカメックス(『緑』)は、通信の互換性が無いルビー・サファイア以降の世界につれて行けず、ゲームカートリッジのバッテリーバックアップの寿命(『銀』)と共に消滅した。

ルビサファ世代以降はそんな思いをしないで済む方法があるので幸いだ。
 3DS『ポケモンバンク』のサービスが続いている期間内に『Pokémon HOME』へ"ポケモンレスキュー"してあげて欲しい。

たとえ今は連れていける地方が制限されていても、無二の思い出の個体が消えるよりマシだと思う。


引用元など

1996/04/05 『ポケットモンスター図鑑』(アスペクト) ISBN 4893664948
1996/10/15 『ポケットモンスター 青』(ゲームボーイ)
1997/04/01【公式】アニメ「ポケットモンスター」第1話「ポケモン!きみにきめた!」
1997/05/『ポケットモンスター公式ファンブック』(小学館) ISBN 4091025781
1998/02〜 ポケットモンスターカードゲーム とりかえっこプリーズキャンペーン:カメックス Lv52
1998/03/01 『絶対ゲームボーイ読本』
(じゅげむMOOK) ISBN  4947679999
1999/04/30ポケモンスタジアム2』(N64)

2003/11/21ポケモンコロシアム』(ゲームキューブ)
2004/01/29 『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』(GBA)
2006/12/14ポケモンバトルレボリューション』(Wii)
2012/07/14ポケモン全国図鑑Pro』(3DS)
2013/10/12 『ポケットモンスター X・Y』(3DS) 
2022/11/18 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(Switch)

カクタス号 https://sscactus.wordpress.com/
CREATURES 役員インタビュー https://recruit.creatures.co.jp/cr_people/director/

ゲーム内のポケモン図鑑画像(足跡情報など)はこちらからお借りしました
【非公式】全世代図鑑検索 https://remopoke.com/search/


5 件のコメント:

  1. 通りすがりで全文読みました。凄いカメックス愛が伝わってきました。素晴らしいですね!

    返信削除
    返信
    1. 最後まで読んで頂きありがとうございます。

      削除
  2. ビャクダン2026年1月18日 20:18

    カメックスとの愛と時間を感じる素晴らしい文章でした。
    カメックスは、カッコいいんです。僕たちがゲームの画面や公式の絵を通してしか観察できないので、時代によっては違和感を抱くことはあるのですが、ちゃんとカッコいいんです。
    そんなことを思い出させてくれる文章でした。ありがとうございます。

    返信削除
  3. 自分も初の相棒が緑版のカメックスだったので凄く共感を得ました。カメックス、格好良いですよね〜

    返信削除
  4. 自分もポケモンの中ではカメックスが一番好きなので、非常に興味深く読ませていただきました(о´∀`о)

    返信削除

はじめに

このブログについて 「ポケットモンスターシリーズ」の世界観について、1人のファンが非公式に考えたことをまとめていくブログです。自身の意見の全容がわかるように置いておくのが開設理由です。 主に 原作 である ゲーム を中心 に、派生ゲームやTVアニメ、映画から得られる情報など...